伝説の漫画、花園メリーゴーランドのあらすじを綴っています。
絶版で幻の作品となっていたのですが、電子書籍にて復活!
読んでみましたが、とても面白い内容で、とても引き込まれました。
※以下、1巻の途中までネタバレしています。
花園メリーゴーランドのあらすじネタバレ
※1巻のネタバレしていますので、ご注意ください。
相浦基一は中学三年生。
ある日、父親から家には先祖代々伝わる刀があることを聞かされます。
刀の銘は「烏丸」。
基一はその刀に興味を持ちます。
「先祖代々に・・烏丸・・・手に入れたい」
基一は中学校の卒業式のあと春休みを利用して、父の故郷である谷竹村へ向かいました。
谷竹村は山奥にあり、日に1本程度のバスに乗って谷竹村を目指します。
バスの中で居眠りをしてしまいった基一。
バスを降り、来た道を歩いて戻りますが道に迷ってしまいます。
日が暮れて辺りも真っ暗。
そこへ偶然スクーターに乗った地元の学生らしき女の子が通りかかります。
基一は声をかけ、谷竹村へ行きたいと伝えると、
彼女は谷竹村は遠く、歩いて行ける距離なのは「柤ヶ沢」くらいだと言いました。
彼女の家は柤ヶ沢で民宿を営んでおり、基一は仕方なく彼女の家へ。
彼女の名前は「澄子」。
二人が乗ったスクーターは長い釣り橋を渡り真っ暗な山道を奥へ奥へと進みます。
澄子の家、民宿「まさがや」で一泊した基一は翌日宿代を請求されます。
しかし財布を何処かで無くしたようで宿代が払えません。
困った基一は親に郵便でお金を送ってもらうことに。
結果的に基一はそのお金が届くまでは「柤ヶ沢」で過ごすことになってしまいました。
基一はここで暮らしている柤ヶ沢の大人、それも女性たちが性に関してオープン過ぎるくらいオープンであることに戸惑います。
ある時、村の大人の女性たちから悪ふざけのカモにされてしまう基一。
しかし当の女性たちに悪意はありません。
その場から逃げ出し宿に戻っても今日起きた事の整理がつきません。
澄子の母「みづえ」は基一の異変に気が付きます。
みづえが夕食の準備をしていると悪ふざけをした女性たちが次々と訪れ、基一に謝っておいてくれと言います。
基一の部屋を訪れたみづえは基一が”悪ふざけ”されたことを確信。
女性たちに対して怒りの感情を見せたみづえでしたが次の瞬間、みづえは部屋の電気を消して基一に抱き着きます・・
基一は女性たちの性に関するオープンさが昔から伝わる村の風習からきていることを少しづつ知ります。
例えば澄子の母「みづえ」がなぜあのような行動に出たのか・・
この集落には女性が33歳の大厄の年に若者と性交渉をして厄を落とすという風習がかつてからあり
この場合、いれば相手としては「外部から来た客人」がより好ましいとされている・・
といった具合に、この村には性に纏わる古くからの風習が今もなお生き続けていたのです。
やっと村から出られるハズだった基一ですが、村と外部を繋ぐ釣り橋が倒木により破損してしまい、また宿に戻る羽目に。
大雪と釣り橋による被害で3、4日は村で過ごさなくてはならなくなりました。
ある日、澄子が普段とは違い、着物姿で母親に連れられ何処かに向かう姿を目にします。
澄子が落としていったお守りを渡すため後を追いかけますが姿は見当たりません。
日も暮れはじめ、諦めて戻ろうとした時、偶然ある家からみづえが出てくるところを見かけます。
みづえと一緒にいたはずの澄子の姿はそこにありません。
澄子のことが気になる基一は窓の外から家の中を窺います。
中にいたのは20代くらいの青年と澄子の二人。
声が少し聞こえます。
「帯ほどくからそこに立って。」
『・・ハイ・・』
ふたりは奥の部屋へ移動してしまいます。
すでに日は暮れ、基一の耳にはもう中の声は聞こえません。
基一の胸は高鳴り、中の様子を知りたくてたまりません。
家の裏手に回り勝手口から中に忍び込みます。
ふたりがいる部屋の前、曇りガラスで中はほとんど見えません。
何かが動いているような気配とふたりの吐息だけがガラス戸を通して伝わってきます。
「大丈夫だって、ほれ・・もっと足広げて・・」
基一の心臓が激しく脈打ちます。
「ちゃんと濡れてっど、澄ちゃん。」
『っダメ』
瞬間、どわっと一気に頭に血が上るのを基一は感じました。
基一はそっとガラス戸を開けます・・
目が合ってしまう基一と澄子。
澄子は枕を投げつけ基一を睨みます。
その澄子の怒りの形相に基一は逃げ出すほかありませんでした。
「誰か・・誰か教えてくれ!ここは・・ここは一体なんなんだ!?」
この後も基一は今も行われている村の風習を次々と目撃していきます。
お互いに淡い恋心を抱きつつ、風習と今のはざまで翻弄される基一と澄子。
部外者である基一の存在はやがて村中を巻き込む大騒動へと発展していきます。
花園メリーゴーランドの感想は?
本作はエロ漫画ではありません。
基一と澄子の恋愛物語です。
村に残る風習と現在の慣習のはざまで揺れる二人。
子供から大人になる通過儀礼ともいえる肉体と精神の対立と融合。
日本の村落にかつて存在した民族的事象を背景に描かれる切ない恋物語なのです。
ともすれば村の民族的事象は偏見と差別や茶化しの対象となりがちです。
しかし、柏木ハルコは民俗学の研究者であった赤松啓介の残した研究資料。
そして自らの取材を元にして出来うる限り厳密に事象を描いています。
まるで歴史漫画でも読んでいるように漫画で歴史を知る感じです。
であるからこそ事象に関して真摯に向き合ったものと思われるのです。
基一と澄子の恋愛も前作「いぬ」のようにコミカルには描かれていません。
中学生の恋愛です、大人からすればじれったく感じる描写が多いです。
でも中学生の頃なんてこんなもんだったなぁと思い起されると思います。
1巻で二人が部屋で一緒に音楽を聴いてる場面を読んだ時、胸が苦しくなりました。
巻を追うごとに二人が性的に大人への道を歩み始めます・・。
通過儀礼とはいえ淋しさを大人の私は感じてしまうのです。
14歳頃の感情を思い返すことは出来ても、あの時の感情にはもうなれません。
本作はあの頃の一瞬一瞬がどれだけ貴重で美しかったかを教えてくれます。
ヒロインの澄子がとにかく切ないです。
最後まで悲しいです。
先にエロ漫画ではないといいましたが、柏木ハルコの描く女性はエロいです。
裸になろうが服を着ていようがエロかったりします。
ほとんど手書きで描かれる絵は暖かく、強く、柔らかな印象を残します。
トーンを使わない手法はまるで水木しげる先生のようです。